今、若い女性を中心に空前の日本刀ブームが起こっているのをご存知だろうか。
名刀をイケメンに擬人化したオンラインゲーム『刀剣乱舞』をきっかけに、ここ数年日本刀のファンが急増。
全国で開催されている刀剣の展覧会には、「刀剣女子」と呼ばれる若い女性がこぞって訪れているという。
お気に入りの名刀をいつでも身近に置いておきたい。そんな刀剣女子たちの間で人気なのが、「日本刀はさみ」「日本刀ペーパーナイフ」だ。
お気に入りの名刀をいつでも身近に置いておきたい。そんな刀剣女子たちの間で人気なのが、「日本刀はさみ」「日本刀ペーパーナイフ」だ。
この商品を企画・製造販売しているのは、関市にある老舗刃物メーカー・ニッケン刃物。
2018年10月に社長に就任した熊田祐士さんの祖父・文夫さんが1946年に創業し、主にはさみやペーパーナイフ、歯科で使うデンタルツールなどを製造販売している。
「折れず、曲がらず、よく切れる」という関の刃物の流れを受け継ぎ、職人が1本1本丁寧に刃付けしたはさみは切れ味が鋭いと定評がある。
「日本刀はさみ」は、電機メーカーで商品開発の経験を持つ熊田社長が「他社にないようなおもしろいものも作ろう」と若手社員とともに企画したものだ。
2015年5月の発売当初から、商品のユニークさと刃物の街・関市で作られたという本物感がギフトショーで注目を集め、順調に売上を伸ばしていった。
一般的なはさみの需要が伸び悩む中、商品を新たな会社の柱に育てていきたいと、熊田社長は更なる販路拡大を模索していた。
相談を受けたセキビズは、オリジナルのデザインを50個の小ロットから自社で製造できる強みと歴女や刀剣ブームで日本刀に注目が集まっている時流に着目。
全国のご当地武将モデルを受注生産してはどうかと提案した。
「2回目に相談に行った時に、『その場所に行かないと買えないレア感のある、特定の武将モデルを作り込んではどうですか』と提案を受け、すぐに取りかかりました」
早速、興味を持ちそうな博物館や自治体をターゲットにダイレクトメールを送り、「縁組相手募集」を開始。
すると土方歳三資料館や毛利ミュージアムショップなどから問い合わせがあり、次々とコラボレーションが実現していく。
「これまではつながりのない会社がほとんどでしたが、セキビズのおかげで取引先が大きく広がりました。
徳川園や関ヶ原駅前交流館など、既に「日本刀はさみ」を取り扱っていたところにも提案したところ、とても乗り気で徳川家康や石田三成モデルの制作が実現しました。
受注生産なので在庫を持つリスクがないこともありがたいです」
「日本刀はさみ」の縁組が順調に進む中、熊田社長は新たな一手を仕掛けた。
刀剣女子にとりわけ人気の高い土方歳三の愛刀「和泉守兼定(いずみのかみかねさだ)」のペーパーナイフを商品化するため、土方歳三資料館と共同でクラウドファンディングに挑戦したのだ。
初めてのクラウドファンディングは、目標額の100万円をはるかに上回る1,617万円の支援を達成、多くの支持者を得て商品化が実現した。
これほどの反響を得たのは、プレゼン動画で支援者の気持ちを掴めたことが大きいと熊田社長は振り返る。
「クラウドファンディングを成功させるには動画が重要だと聞き、映像制作会社を探していましたが、予算に合うところが見つからず困っていました。
セキビズで相談したところ、クラウドソーシングというサービスがあることを教えていただきました。
そこで知り合った映像作家の方と一緒に予算内で非常におもしろい映像を作ることができ、大きなインパクトを残せました。
本当にありがたかったです」
この映像は動画サイトで2万7千回以上(2019年6月30日現在)の再生回数を数え、今も増え続けている。
https://www.youtube.com/watch?v=xJfXTiuMjcQ
その後行なった「新撰組モデル」と「日本刀はさみ名刀シリーズ」の2度のクラウドファンディングでは、ニッケン刃物の社員が動画制作を担当した。
「映像が趣味の社員に任せたところ、とてもモチベーション高く取り組んでくれました。
演じているのも社員なんですよ。時代劇映画のようなドラマチックな映像に仕上がって、とても満足しています」
https://www.youtube.com/watch?v=lRM-MURp5LQ
https://www.youtube.com/watch?v=dwukYVSBWTU
クラウドファンディングの成功や積極的なニュースリリース発信により、新聞、テレビで取り上げられる機会も格段に増えた。
「リリースの原案は私が作るのですが、セキビズさんのアドバイスを受けるとキャッチコピーなどが驚くほど魅力的に変わるんですよ。
そのおかげで、今でも3ヶ月に1回くらいの頻度で新聞やテレビでご紹介いただいています」
「日本刀はさみ」「日本刀ペーパーナイフ」は、2018年に岐阜で行なわれたアジアジュニア陸上競技大会の参加記念品にも採用され、人気アニメ『ONE PIECE』とのコラボも実現するなど、当初は予想していなかった大きな展開が生まれている。
今後は海外展開も視野に入れたいと夢は広がる。
さらに取引先や売上の増加だけでなく、間接的な効果も生まれていると熊田社長は声を弾ませる。
「テレビでうちの会社を知って、刀剣女子の高校生が新卒採用に応募してきてくれたんです。
製造の現場は重い荷物を運ぶなど女性に難しい作業があるためかなり悩んだのですが、とても情熱を持った子だったので採用しました。
すごくがんばってくれていて、新入社員なのに難しい工程を任せられるまでになりました」
会社や商品がメディアで紹介されることは、社員が会社や自分の仕事に誇りを持つことに繋がってきたと熊田社長は大きな手応えを感じている。
月に1度は必ずセキビズを訪れるという熊田社長。セキビズからのアドバイスはすべて社内ですぐに共有、検討するという。
「相談を重ねるごとに、セキビズさんにうちの会社のことをどんどん深く知っていただけて、さらに提案の幅が広がっていると感じています。
なくてはならない、パートナーのような位置づけですね。」
2018年11月に発売した観葉植物をモチーフとした事務用ハサミ「cocone」は、働く女性の癒しになればと企画した商品だが、部屋の中で置き場所が決まってないはさみを片付けたくなる「片付け上手」な商品という別の訴求ポイントをセキビズに見つけてもらえたことで、働く女性だけでなく、子どもを持つお母さんなどにもターゲットが広がった。
「自分にはないアイデアや知識を持っているので、選択肢が広がりますね。
新たに商品を出すにあたっても、『これ売れるかなあ』とか不安を感じている時に、新しい気づきを与えてもらえて、訴求効果がある形でリリースできるのは心強いです」
ライター:山田 智子